成績が悪い学生のための数学学習法

AI時代に数学を学ぶということ

chatGPTが東大入試数学満点

chatGPTが2026年の東大入試の数学で満点を取ったという話がありましたが、AIが数学で満点を取るようになった時代に人間が数学を勉強する意味や方法論は、今までと変わるでしょうか。

よくある予想は、AIが解くようになってくるから、特に仕事で数学を使う人などでなければ、人間は数学を勉強しなくてよくなる、というものです。

ですが、私はそうはならないと思っています。むしろ、数学を学ぶ重要性は高まるし、それに加えて「数学を勉強する理由」が質的に変化していくと思うのです。簡単に言えば「より構造的な考え方」が重要になってくるのではないかと考えるのです。この「構造的な考え方」というのは非常に重要なものだと思いますが、今回は数学の学習法の話なので、ここで深入りは避けておくことにします。


数学ができない人の学習法

基本的な考え方

数学が苦手でできない人を前提に考えた場合、全体像としては次のような流れになると思います。

1.定理・定義を理解して覚える

これは必須です。

定理は証明不要で使ってよいことになっていますが、どの定理にもその背景や意味、ものによっては証明があります。こうしたものをしっかり理解して、その上で覚えてしまうことは絶対に必要です。具体的には、その定理について何も見ないで人に説明できるようにする、ということを目標にすればよいと思います。

また、定義は言ってみれば「お約束」なのですから、これも「何を指しているか」「どんなものか」を人に説明できるようにして覚えてしまうことが必要です。

2.基本的な典型問題をしっかりと固める

これは簡単に言えば「問題の解き方を覚える」ということです。数学には「典型的な問題」というものがあります。そうした問題をしっかり理解し覚えてしまうことが大切です。そしてその時に「どの方針で解くか?を言語化する」ようにすることを意識します。

3.「解き方」のパターンを覚えて使えるようにする

これは標準レベルの問題を中心に行うのが効果的です。

例えば、因数分解なら

1.一文字中心にまとめる
2.共通因数でまとめて整理する
3.因数分解の公式のあてはめ
4.因数定理の活用

と、この4つの方針が自分のものになっていれば解けない問題はありません。ただし、これが使いこなせることが肝心です。そういうものを身に着け、習熟することです。

4.どの方針で解くかを言語化する

標準から標準より少し難しい問題を相手にするのがこの段階です。問題を解く前に、どういう方針で解くかを「日本語で書き出してみる」のです。そして、解きながらその方針が正しいかを確認します。その上で解答を見て解法を学びます。それによって、問題を目の前にした時に、自分がどうすべきかがわかる力が身に付きます。


数学ができるようになる三段階

数学が本当にできない学生ができるようになるのには次の段階を順番に踏み固めていく必要があります。それは、

  • 暗記段階
  • 演習段階
  • 理解段階

です。これが基本だとくまは思うのです。


暗記段階

覚えることの大切さ

例えば難しい証明とか定理の説明とかも、最低限知っておくべき定義や定理がすぐに出てくるようでないとそもそも理解ができません。

解き方についても、典型的な問題と解答を理解して覚えているから問題が解けるのです。ちなみに大学での数学などの難解なものも、意味が分からないままでよいから暗記していくと、いきなり理解できたりします。だから、数学において「覚えること」というのは「理解するため」にも意外と大事なのです。

この段階では

  • 定理と定義
  • 基礎的な典型問題

を暗記することが大切です。


数学は暗記だ!

たしかに数学に暗記は必要です。特に最初の段階でこれをしなければ、どうにもしようがありません。

そうすると、極端な人が出てきます。つまり

「数学は暗記だ」
「数学は暗記科目だ」

というような人です。確かに大学入試で合格点を取る程度なら「暗記だけでも取れる」のは事実です。だからたちが悪いのです。しかし、数学ができるようになるためには、大学入試だけで考えても、この「暗記だけ」という方法は効率が悪いし、得るものが乏しいのです。

具体的な例を挙げれば3,000題の入試問題を暗記した場合と、しっかり選んだ600題をしっかり理解したのでは、600題の方がより多くの問題が解けるというイメージです。


考えてから書くか?書いてから考えるか?

理解のための方法

これはできる子の多い予備校や進学校の先生に多いのだけど「数学はよく考えて解きなさい」とか「考えて答案を書きなさい」という話。あれ、害悪しかないとくまは思うのです。

数学は「考えて書く」というのはだめで「書いて考える」でないとだめだと思うです。すると「そう言われてもわからないと書きようがない」という反論が出てくることが多いけど、その時、くまは言うのです。

問題を書き写すのはできるよね?

と。

数学の問題は、読んだだけでは何も頭に浮かばなくても、書き写してみると「もしかして……」が出てくることが少なくないのです。もちろん、まるっきりダメな時もあるけれど、それでダメな問題はたぶん考えても無駄だから、さっさとあきらめて、解答を写しながら理解することが大事なのです。

結局、人間が数学を理解するのには「書くこと」が重要なプロセスだと思うのです。


考えるという言葉の意味

実は、できる学生とできない学生では、

「考える」

という言葉の意味が違うのです。

進学校の先生や予備校のトップクラス担当の先生が言う

よく考えなさい

の「考える」は、実際には

頭の中で試行錯誤する

ということを意味している場合がほとんどです。

ところが、できない学生にとっては

頭の中が真っ白

なのです。だから「考えなさい」と言われると、

考えているんですけど、
何も浮かばないんです……

になります。ところが、くまの

問題を書き写すのはできるよね?

は非常に強いのです。なぜなら、

真っ白

から

とりあえず手を動かす

へ移せるからです。実は認知科学でも、人間の思考というのは、頭の中だけで行われているわけではないと言われています。


紙に書くということ

紙に書くことで、

脳+紙

が一つの思考システムになります。例えば、

x²+5x+6

を見た時、頭の中だけでは何も出てこなくても、紙に書いて、


5x
6

と並べると、

2と3かな?

が出てくることもあります。これは、

考えてから書く

ではなく、

書いたから考えられた

なのです。そして、くまが言う

それでだめな問題はたぶん考えても無駄

というのも教育的には、そして現実的にも非常に重要です。なぜなら、できない学生ほど、

分からない→止まる→時間だけ過ぎる

となりやすいからです。今これを読んでくれている「数学が苦手な人」にはとても良く分かってもらえると思います。そこで、

解答を写しながら理解するという方法

をとるのです。これは決して逃げではありません。むしろ、

理解のための観察

なのです。


素振りと同じ

そして、どのレベルでも「自分が解けない問題を書いて理解して覚える」というスタンスは忘れてはいけないのです。大リーガーでも毎日素振りするのと一緒なのです。

10年ごとに教育課程が変わるけれど、大学入試に関して言えば、その範囲がそんなに大きく変わることはありません。

そうすると前述の「因数分解の解き方」のような「解き方の方針」は全範囲でせいぜい50前後しかありません。逆に言えば50前後の「解き方の方針」を知っていれば解けない問題はないことに理論的にはないことになります。

でも、同じ「50の方針」を教えても、標準問題しか解けない学生もいるし、東大や京大を受けて「数学だけは満点取れた自信があります」という学生もいます。

これは素振りの例で言えば、「素振りの量」と「素振りの真剣さ」と「素振りの継続」の差であって、才能とか能力の差ではないのです。

多くの「できない学生」を東大や旧帝大、慶早などに入れてきた経験上実感しています。

一文でまとめるなら、

数学の才能とは
解法を思いつく能力ではなく、
解法を自分のものにする習慣である

となる気がします。


演習段階

方針を立てる

さて、話は戻ります。

暗記段階の次は「演習段階」です。これは前述の素振りの理屈です。質の良い標準から標準以上の難易度の問題と格闘します。

このときに重要なのはいきなり解き始めるのではなく、

日本語で解き方の方針を書き出してみる

と、いうことです。


スピードを味方にしよう

これは数学に限ったことではないけれど、意外と無視されがちで大事なのが「スピード」ということ。

毎日3題づつ完璧にしていくより、30題を毎日ノートに写すのを10日間する方が定着も理解も早くて深いのです。これは英単語とかでもそうで、毎日20個完璧にするより、毎日100個5日間ざっと覚える方が、労力と時間は結果的に少なくて済むし、成果は大きいのです。

数学でも、1つの問題に必死に時間関係なく取り組む、というのは数学科にでも進学してからやればよいのであって(それでも修士卒業くらいまではいらないと思っているけどね)、少し考えてわからなければさっさと答えを写す。そして無理やりでよいから、先に進んでいくのです。

この無理やりでよいから先に進むのは意外と大事で、先に進んだ時にいきなり100ページ前のわからなかったことがわかることがあるのです。

数学なんて、わからなければわからないから、さっさとギブアップして先に進むのが正解です。もちろん、プロの数学者とかそれを目指している大学院生とかは別です。あの人たちはうんうん唸って考えるのが仕事だから(笑い

それで、ある程度(ここが大事)わかってきたら、今度は色々な問題を解くのです。最初は解けないけど気にしない。ともかく解きまくる。そうすると、知識の使い方がだんだんわかってきます。

この時、どんな問題でも前述の「方針を立てる」ことが大事です。そして、解答と自分の解答を見比べて、最初の「方針」があっていたかどうかを確認します。そして違ったら、正しい方針を問題の脇にでも書いておく。これをやっておくと復習の効率と精度がけた違いになります。

筋のいい学生だと200題くらい、普通の学生が300題くらい、ちょっと苦手な学生でも350題くらい

「方針」→「確認」→「修正」

を繰り返すと、あら不思議、応用力がいつの間にかついているのです。

大学入試レベルで求められる応用力は所詮「方針修正能力」と「こだわらない力」なのです。自分の方針が間違っていたことに早く気が付いて、すぐにそれまでの考えにこだわらずに方針転換する能力。これが大学入試レベルで言われている「応用力の正体」なのです。

東大・京大などに行く学生とそうでない学生の差は、計算力より「方針修正回数」の差なのです。

この段階で時間切れになって入試本番を迎えるという学生が大体8割です。それでも第1志望合格はしてきました。


理解段階

さて、8割のの学生が演習段階で入試本番になるのですが、2割くらいの学生が「これってこういうことですか?!」という質問を持ってくるようになります。これが「理解の段階」まで行った学生です。こういう学生はそういう発見がいくつかできた段階で入試本番を迎えます。彼や彼女たちは数学を「武器」にしてきます。あと、この段階に行った学生は、途中で進路変更して数学科や物理学科に行く学生が2~3割出てきます。


まとめ

以上、数学の学習法について書いてきました。簡単にまとめると次のようになります。

1.定理・定義を理解して暗記する。
2.基本的な典型問題を理解して覚える。
3.標準的な問題を相手に演習する。この時「方針」を最初に考えてみる習慣をつける。
4.わからない問題は、すぐにあきらめて解答を写して理解する。その時に「方針」があっていたかに注目。

このステップで学習すれば数学は必づできるようになります。また、注意点としては

数学は書いて考える
考えて書くのはダメ

ということです。

そして、このような勉強法で数学ができるようになると、AI時代に必要な数学的リテラシーや論理力が自然と身に付きます。